好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「…分かってるんだ、最低なことを言ってるのは」

私が何か答えるより先に、俊がポツリ、ポツリと話しを続ける。


「あんな最低な別れ方をして、嫌われて当然だってちゃんと分かってる。

前にヨリを戻してほしいって言った時は、あの彼女とすぐ別れて、お前のとこに行けば今ならまだ間に合うかも…みたいな軽めの気持ちもあったと思う…」

「うん…」

「でも、今は違うんだ。

職も決まって、色々冷静になって、改めて章子の大切さに気付いた。身勝手だって分かってるけど。

大学を卒業して、ずっとフラフラしてた俺に、章子はいつも笑顔を向けてくれてた。いつも側にいてくれてた。
あの時は気付かなかったけど、ずっと、嫌な思いもさせてたよな…。ほんとにごめん」

「…ううん」

ずっと就活もしないでフラフラしてた俊にストレスが溜まってたのは事実だ。だから、あえて「そんなことないよ」とは言わなかった。今の俊は、私の気持ちをきちんと分かってくれているから。
そう。過去にストレスを抱えてたとは言え、今、この瞬間。俊が私のことをちゃんと考えてくれてるってことが凄い嬉しくて、そんな昔のストレスなんかどうでもよくなって。そんな意味で、私は「ううん」と首を横に振った。



「今、章子に彼氏がいるのは分かってる。

だから、期待はしてない。


それでも、俺はやっぱり章子が好きだから、気持ちを伝えたかった」



――気持ちを伝えたかった。

そう言えば、私も俊に告白した時、同じようなことを言ったな。



高校を卒業して、それまでみたいに毎日教室で顔を合わせることがなくなるんだなって思って。

これから、お互い大学生になって、新たな日々を送る中で、きっと俊は私のことなんか忘れてしまうと思った。


だから、告白した。

もちろん、付き合えたらいいなとは思ってたけど、でも、


それ以上に。



――私はあなたのことをこんなにこんなに大好きなんだよって伝えたかった。



あの時の私の気持ちと、今の俊の気持ちは、きっと同じものだ。


だから、俊がどれだけの気持ちで私にそう言ってくれてるのかがわかって、凄く嬉しい。



だからこそ、



「ありがとう。


…ごめんね」


ちゃんと答えなきゃ、って思った。
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