忠実わんこに愛を囁く

「今度一緒にランチ行きましょう? 先輩と仲良しのミキハラさん? その人と一緒でもいいですから!」


「遠慮します」


「即答!? ランチもだめで、今日もだめ!? 花の金曜日なんですよ!? それに、少しくらい悩む素振り見せましょう!?」


 隣りで嘆く声が聞こえる。


 どんな顔をしているのかも想像できて笑えるけど、とりあえず無視。


 だって、面倒だから。


 でも、少し面白いかも、なんて思う自分もいる。


 とっくに定時を過ぎたオフィスに響くのは、パソコンのキーボードを叩く音と、不満そうな声。


 私たちがこんな関係になったのは、いつの頃だったか。


 すぐに思い出せないくらいには、時間が経ったように感じる。


 隣りで煩わしい程に吠えるのは、私の2つ年下で24歳の君島(きみじま)。


 こんなヤツなのに、社内では断トツで女性人気が高いらしい。


 所謂イケメンと言われる部類で、私もかっこいいと思わないこともない、かもしれない。


 社内の女性が言うには、わんこ系でついつい構ってあげたくなる可愛さがあるとか。


 それなのに、さらりと仕事をこなすところがイイんだとか。


 明るくてよく喋り、いつでも笑顔。


 そういうのがイイんだって。

< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop