悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
このまま寝るなんて気は毛頭なかった。

まだ20時前だし、こんなモヤモヤした気分のまま眠れそうにないし。

無性に家の中にいたくなくなったあたしは、スキニージーンズにトレーナーというラフな格好をコートで隠し、こっそり部屋を出た。

今の時間、お父さんはお風呂に入っているし、お母さんもこれからドラマにのめり込むだろうから、たぶん少しくらい抜け出してもバレないはず。


泥棒みたいに抜き足差し足忍び足で、周りを確認しながら玄関へと向かう。

よーし、あとは靴を履くだけ!

ブーツに片足を入れた、その時。


「あれっ、ひよちゃん何してるの?」


ドキィッ!!

背後から無邪気な声が響いて、心臓が飛び跳ねる。ヤバい、大地がいるんだった!

振り返ってしーっと人差し指を口にあてると、お風呂上がりでまだ髪が濡れている大地は、キョトンとして口を閉じた。


「ごめん、大地! あたしちょっとだけ外に出てくるから、お父さん達には内緒にしておいて!」


小声で言うと、にや~っと笑った大地はあたしの耳に顔を近付け、同じく小声になって言う。

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