悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
少しだけ複雑な想いが渦巻くのを感じつつ、二人で同じ電車に乗り込む。

この時間だともう人は少ないから、今日は並んで座ることが出来た。


「あーねみぃ……」

「お疲れ様」


腕組みをしてまたあくびをしている柳に声を掛けると、彼は眠そうな顔でふにゃりと笑う。

……な、なんか可愛い。

不覚にもキュンとしてしまった胸に知らんぷりするように、あたしは前を向いて車窓の外を眺めた。


電車が動き出し、何を話すでもなくただ揺られること約10分。

あまりに静かな隣を不思議に思ってちらりと見やると、彼は腕組みをしたまま俯いている。


「柳? ……寝てる」


顔を覗き込むと、しっかり目を閉じていてびっくり。

寝るの早っ。そんなに疲れてたのか。


でも寝顔を見るのなんて、たぶん幼稚園以来。

一番最後に起きるのはだいたい柳で、先生に叩き起こされてたっけ。

懐かしい記憶が蘇ってきて、思わず笑みがこぼれる。


気持ち良さそうに寝ちゃって……無防備な姿がまた可愛く思えちゃう。

こういうのを母性本能がくすぐられるっていうのかな。

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