悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
ゆっくり歩幅を合わせて歩いていくと、門の手前に一台の車が停まっているのが見える。

雨に濡れる、黒のハイブリットカー。

それに乗ろうとしていた男性を見て、ひよりが声を発した。


「あれ、秋ちゃん……!?」


その名前にピクリと反応する。

向こうもひよりの声に気付いたらしく、俺達を見て目を丸くした。


相変わらず好青年らしい小綺麗な格好に、整った顔立ち。

記憶の中のイメージを崩さないまま大人になった秋史が、そこにはいた。


「ひよりちゃん! ……と、もしかして柳くん?」


傘をさしてこっちに近付いた秋史は、確かめるようにまじまじと俺を見つめる。

複雑な気分で、無愛想のままとりあえず軽く頭を下げた。


「お久しぶりで」

「やっぱりそうか。想像通りますますカッコよくなったな。元気そうでよかった」


無愛想なままの俺にも、秋史はにこやかに言う。

本心かどうかはわからないが、誰に対しても人当たり良く接する秋史は、さすが大人だ。

まぁ、昔から俺が冷たい態度を取っても、秋史はたいして気にもしていなくて、それがまたイラッとさせられてたんだけど。

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