悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「何があったの? さっきまで、もう勝手にやっててよーってくらい仲良くしてたのに」

「ひよりと直接何かあったわけじゃなくて……会いたくないヤツに会っちまったんだよ」

「もしかして“秋ちゃん”?」


相模が名前を出したおかげで、手を繋いだ二人の姿がまざまざと蘇る。

何でこんなとこにいたんだと聞いてくる相模に、理由を簡単に説明すると、涼平がまだギターをいじりつつ言う。


「それで? まんまと彼女がさらわれちゃったとか?」


チッ、と思わず舌打ちする俺。

涼平から無理やりギターを取り上げると、自分の肩にストラップを掛けた。

サブがドラムを使わせてくれないなら、コイツを掻き鳴らすしかうっぷんを晴らす術(すべ)がない。


「ずっと不思議だったんだけどさ、そんなに好きなのに何で野放しにしとくわけ? 早くコクっちゃえばいいじゃん」


俺の横に同じように腰掛けた涼平のストレートな言葉に、一瞬弦を弾く手を止める。


告白しないのは、恥ずかしいからとか勇気が出ないとか、そんな理由じゃない。

ずっと前の、まだガキだった頃の俺にとっては少しショッキングな出来事が、いまだに足を引っ張ってるんだ。

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