悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
ドキリとして視線を泳がせるあたしに、わかりやすいな、と言って秋ちゃんは笑った。

でも、それは少し渇いた笑いだったように思う。


『昔は柳くんに意地悪されてばっかりだっただろ。それなのにどうして好きになるかな』

『……わかんないや、あたしにも』


気が付いたら、なんだかすごく好きになっていた。

柳は意地悪だけど、決してそれだけじゃなくて、大事なことを教えてくれるからかな……たぶん。


秋ちゃんはあたしにちらりと目線を移して苦笑する。


『俺の中では、柳くんに困らされてるひよりちゃんのイメージしかないんだ。だから大丈夫かな?って、ちょっと心配になってさ』

『もう、過保護なんだから』

『……過保護にもなるよ』


そう呟いた彼は前を向いていたけれど、目の前の道ではないどこか遠くを見ているようにも思えて、少しだけ心に引っ掛かるものを感じた。

あたしの家に招待した日、帰り際に見せた表情と似ていたような気がする。


それからケーキ屋に寄って、あたしを家に送り届けると、彼はすぐに帰っていった。

嫌味っぽいこと言われた柳は、きっとまた機嫌を損ねただろうな。

……やっぱり秋ちゃんは、何を考えているのかわからないや。


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