悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
たくさん迷惑をかけたし、そんなあたしのことなんて良く思ってないかもしれないけど。

それでも、あたしは柳のことが好きだ。

誰に何を言われようと、この気持ちは変わらない。


「やなぎぃ……」


彼への愛しい想いと、お父さんに対する反抗心がぐちゃぐちゃに混ざり合う。

再び涙が溢れ出し、ブランコの鎖を握ったまま下を向いてアイツの名前を呼んだ。

その時。



「お呼びですか、お嬢様?」


──今一番聞きたかった声が、あたしの頭上から舞い降りてきた。


……何で? 空耳?

頬を濡らしたまま目線を上げると、オレンジ色の空を背負った、大好きな幼なじみがいる。


「や、なぎ……何で……?」


クールな表情で、ぽかんとするあたしを見下ろしていた柳は、手に持った白い箱をぬっと差し出してきた。


「え?」

「さっきは、ちょっと言い過ぎた……ごめん」


ぶっきらぼうに謝る彼から渡されたものは、明らかにケーキ屋さんの箱。

あたしは、まだ無愛想なままの顔をじっと見つめる。


「それだけ言いに来たの? ケーキまで買って……?」

「……これでご機嫌直してくださいますか」


なぜか執事キャラを続ける柳に、あたしは思わず吹き出した。

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