悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「柳くん、だね?」

「はい。ご無沙汰してます」


表情を変えずに頭を下げる柳を、訝しげに見るお父さん。

今にも火花が飛びそうな様子に、あたしはハラハラしまくり。


「どうして二人でいるんだ?」

「途中で会ったの、偶然」

「ほう……それで君が娘を連れ回していたのか?」

「違うよ! あたしが──」

「遅くなってしまって、本当にすみません」


お父さんに反論しようとしたあたしを遮り、柳が再び深く頭を下げた。

そんな彼に、思わず声を荒げてしまう。


「あたしが付き合わせちゃったんだから、柳が謝ることないよ!」

「無理やりにでもひよりを帰らせようと思えば出来たのに、そうしなかったのは俺の責任だから」


ぴしゃりと言われ、あたしは口をつぐむ。

ギターを弾く時とはまた違う、こんなに真剣な表情をする柳に、ごくりと息を呑んだ。

腕組みをするお父さんは、呆れにも似たため息を吐き出す。


「わかってるなら、今後はこういうことがないようにしてくれ。君のような男と一緒にいて、何かあってからじゃ遅いんだから」


まるで柳があたしに何かするような言い方に、また怒りが湧いてくる。

ぐっと手を握りしめて堪えていると、「本当にすみませんでした」と、柳は再三謝った。

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