悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
これじゃ、あの集金の事件の時と一緒じゃない。

何も悪くない柳が謝って、あたしは何も出来ないままで──。


そんなの嫌だ、と心が反発して、なんとかお父さんをこらしめられないものかと考えていた時。


「……でも」


顔を上げた柳が、わずかに挑戦的な視線をお父さんに向けて、こう言った。


「ひよりがどうして家を出たのか、帰りたくなかったのか、その原因はわかりますよね?」


ぐ、と言葉に詰まるお父さん。

続けて、柳は落ち着いた声でしっかりと言い放つ。


「俺は何を言われても構わない。でも、ひよりの気持ちはもう少し汲み取ってあげてほしいんです」

「柳……」


あたしの味方をしてくれる彼だけど、お父さんはさらに表情を険しくした。


「どうして君にそんなことを言われなければいけないんだ? 君には関係ない話だろう」

「関係あります」


お父さんの言葉尻にかぶせるくらいの勢いで、自信に満ちた声できっぱりと言い切る柳は、力強い眼差しでお父さんを見据える。


「俺は、好きなことやって、生き生きとしてるひよりが好きなんです」



──え?

す、好き……!?

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