近くて遠い温もり


私は自分の名前が嫌いだった。見た目にも性格にも合っていないから、いつもみんなに心の中で嘲笑されているような気さえしていた。

それを他の同期から伝え聞いた彼は「せっかく可愛い名前なのに」と話していたらしい。もしかしたら嶋っちは、私が誰かに名前で呼ばれ慣れれば、私の名前コンプレックスもなくなるんじゃないかと思ってくれたのかもしれない。こいつは彼氏がいなさそうだから、せめて俺ぐらいは、と。


まあ、彼氏なんてものは大学二年に別れて以来いないから、その通りなんだけど。

だから私を名前で呼ぶのはきっと、彼なりの優しさ、なんだと思う。

嶋っちの優しさは嬉しいけど、少し、寂しい。


「ちょっと、ごめん」

嶋っちは携帯を取り上げ、着信をチェックしている。

目を伏せた顔もいいな、と見惚れそうになって、慌てて視線を逸らした。この後きっと嶋っちは、頬が緩んでにやけ顔になるだろうから。そんなの、一瞬だって見たくない。


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