真夜中のパレード


おかしいと思ってそのまま救急車を呼んで、
すぐに入院することになった。


左半身が麻痺していると医者が言っていた。



最初はここまで大事になると思わなかった。
手術をすればすぐに退院して、
元通り元気になると思っていた。



けれど母親の意識は、もうずっと戻らない。


投薬して、手術もして、
なのに状況は一向に変わらない。


入院費も積み重なり、とても透子一人が
払える金額ではなくなった。


近くに住んでいる母の弟が援助したり
お見舞いに来てくれるけれど、
あまり頼りすぎるわけにもいかない。


結局申し訳ないと思いつつ、
母親が大事に貯めていた
貯金を切り崩して費用を支払うことになった。


それは皮肉にも、
「透子が結婚式をあげる時にでも使って」
と言われて預かっていたものだった。


こんなに母親が大変な時に、
上条さんと会っていていいのだろうか。


自然と罪悪感が胸につもり、
何をしていても苦しんでいる母に
悪いような気がしてくる。


< 107 / 307 >

この作品をシェア

pagetop