真夜中のパレード

上条は怒ったように眉間にシワを寄せる。


「どういう意味だ?」


透子の声が、だんだん尖って鋭くなっていく。


「あなたは天音を美化しすぎじゃないですか?
残念ながら、私はそんなに綺麗な人間じゃありません」


もう、怒っているのか悲しいのか、
自分の気持ちが何なのか分からなかった。


「私だって、誰かを嫌いになります。

憎むこともあるし、嫉妬して暗い気持ちになって、
自分自身を嫌いになることだってあります。

私は天音じゃありません!
七瀬透子です!

結局あなたは、
天音の顔が好きだったんでしょう!」



上条もそれにはむっとして透子につめよる。


「違うっ!
違うから、天音さんと別れることを決意して
君に好きだと言ったんだ」


「そんなの信じられません!」


「信じられないのは俺の方だ! 

今までずっと嘘をついていたくせに、
どうやって分かれというんだ!?

どこに住んでいるか、どんな生い立ちか、
ずっと隠してきて、
本当の名前すら教えてもらえない!

そうやって俺を騙してきたくせに、
すべて俺のせいなのか」


「一番私が辛い時に天音を捨てたくせに、
私ばっかり責めないでください!」


「何を言ってるんだ!?
君の言ってることは滅茶苦茶だ」

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