真夜中のパレード


むしゃくしゃしたからせめて
他の女で気を紛らわそうかと思い、
一番に思いついた名前を携帯のアドレス帳から開く。


けれど、彼女にも連絡出来なかった。


思わず小さく舌を打つ。


一番付き合いの長い彼女に、
つい最近結婚すると告げられたばかりだったのを思い出した。


思わず苦い笑みがこぼれる。


大人の恋愛なんて言えば聞こえはいいけれど、
所詮好き勝手にやっているだけだ。


彼女は冬馬が他に何人もの女性と
付き合っているのを知っていたし、
冬馬だって彼女が今勤めている会社の
社長の愛人なのも心得ていた。


お互い納得した、都合のいい関係だった。


いつなくしてもいい関係しか築いてこなかったのに、
いざなくなると空虚な気がするのはどうしてだろうか。


自分がそんな風だからこそ、
きっと透子と上条が羨ましかった。


あんな風に、いい大人になってからも
お互いバカ正直に向き合って、

互いのことを想い合ってるくせに
そのせいで嘘をつけなくて、

結果自分も相手も傷つけて。


まるで学生みたいな、青臭い恋愛だった。

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