真夜中のパレード



  ☆



化粧室から席に戻ると冬馬が透子の携帯を勝手にいじっていた。


「……何してるの?」


「薔薇の花が年の数だけ欲しいです……っと」

「ちょ、ちょっと冬馬!」


「はい、そうしーん」


「あっ!」


透子は冬馬の手にあった携帯を引ったくった。


「なんてことするの!」


怒っても、メールはもう発信された後だった。



「冬馬っ、勝手に触らないでよ!」



透子が睨んでも、冬馬はちっとも気にしていないようだ。


「いいじゃん。復讐したくてやったんだろ?」


「だからって、こんなふざけた内容送って上条さん怒るに決まってるじゃない!」


冬馬は窓から時計塔を見下ろした。


「ほら、気づいたみたいだぜ」



透子も言われて上条の様子を見下ろす。


上条は上着から携帯を取り出し、メールを読んだ後時計塔の前を立ち去った。


「あっ……!」





冬馬はニヤニヤしながら煙草をくわえた。


「あーあ、さすがに帰っちゃったか」


それを見て、透子は肩を落として息を吐いた。


「……そう、だよね。
からかわれてるって気づいたら、嫌な気持ちになるよね」


透子は少し落胆しながら、小さくなっていく上条の姿を見下ろしていた。



そしてゆっくりと椅子に腰掛け直す。
最初は冬馬に怒っていたけれど、もしかしたらこれでよかったのかもしれない。


本当はこの顔で知り合いに会うなんて、避けられるなら避けたいに決まっている。
自分の正体が上条に知られたら、今の会社にいることは出来なくなるだろう。



だからこれでよかったんだ。


――彼を裏切るように終わってしまったのは、申し訳ないけれど。


< 40 / 307 >

この作品をシェア

pagetop