真夜中のパレード


きらきらと水の雫が輝いている。
ゆっくりとした噴水の動きを見ていると、心が落ち着いた。


「天音さん」

「はい?」


上条に呼びかけられ、透子は顔を上げる。



「これ、よかったら、受け取ってください」


「……何ですか?」


透子はリボンのかかった細長い箱を受け取った。


赤いリボンを解くと、中からはさっき透子が欲しがっていた花のチャームの
ネックレスが入っていた。


――いつの間に。



「これ……」



おそらく彼も迷っていたからなかなか渡せなかったのだろう。
透子は首を振って眉を下げた。


「悪いです、受け取れません。
私、映画も食事も結局上条さんに全部出してもらってばかりで。
最初にお会いした時も、助けてもらったのに」


上条は透子を見下ろすように向かいに立った。


「気にしないでください。
私がしたくてしてるんですから」


「でも……!
上条さんにお礼をしようと思ってきたのに、結局私は何も出来ていません」


そう訴えると、楽しげに微笑まれた。

< 56 / 307 >

この作品をシェア

pagetop