真夜中のパレード
自分も、そうだったからだ。
上条は知らないだろうけれど、
職場でもついつい彼の姿を目で追ってしまう。
それから上条はそっと透子の手をとった。
「今は、何となくじゃありませんよ」
「え?」
「こんな風に、寝ても覚めても誰かのことを考えているのなんて、
生まれて初めてかもしれません」
顔が赤くなって、恥ずかしくて。何も答えられなかった。
「それくらい、あなたが好きってことです」
返事が出来ない変わりに、上条の手をそっと握り返した。
伝わればいいと思った。
この手のひらから、せめて思いの欠片だけでも。
彼に伝わりますようにと、そう思った。