課長が私に恋してる?
そしてその勢いで今度は明日香のデスクに行く十和を見送りながら、心の中だけで明日香に御愁傷様ですと手を合わせた。
さて、今度こそ帰るか、とコートを着たところでふと目の端に視線を感じる。
はて何だろうとそちらに視線を向けるとそこには同期の田嶋がいた。いまは財務課に居るため、たびたびこうして経理課に書類を持ってやってくることがある。
「よう」
人懐っこそうに笑うのは入社当初から全く変わらない。
ちなみに入社式で一番最初に仲良くなったこともあって、昔からの戦友のような気持ちだ。今でもたまに飲みに行く程度には仲が良い。
「おう」
琴子も返事をしてにやっと笑ってみせる。
これがいつもの挨拶だった。
「なに高遠、合コンとか行くのお前」
「聞いてたの?立ち聞きとか趣味悪いなー」
「聞こえたんだっつの」
そうしてカラカラと笑って、餓えてんなあ、とからかわれる。
ウルサイ彼女いない歴=年齢、と舌を出すと、軽く小突かれた。
「まあ変なのに捕まったりすんなよ」
「んー、そうなりそうになったら助けてってLINEするからヨロシク」
「えー、めんどくさい」
「田嶋くーん、本音漏れてますよー」
そうして笑いあってるところでいきなり後ろからパシっと書類ではたかれる。
え、なになに誰っと後ろを振り向いて「ひぇ」と琴子の口からは変な声が漏れた。