課長が私に恋してる?


近すぎてぼやける顔、微かな息遣い、しっかりと捉えられた視線が琴子の鼓動を早くする。



そんな琴子をよそに、掠れるくらい小さな声が耳をくすぐった。



「阿呆か、お前は。もしかして、じゃない。……これが嫉妬以外の何に見える」



そのセリフに息が詰まった。
予想を裏切る展開すぎて思考が追いつかない。



(不覚。これは想像できなかった)



ピタリと焦点は琴子に。
その視線から目が反らせないのか、意地で反らしてやらないのか。自分でも分からないまま琴子も如月を見つめて問う。



「何に嫉妬するんですか。田嶋くんと話してたことですか。それとも合コンに行くこと?」



「残念だったな、どっちもだ」



即答されて、うっと言葉に詰まる。
こんなに素直な嫉妬をされたのは初めてで、どう対処すべきか困る。



「で、でも課長には何も言われる筋合いないですよ、まして呼び出されて叱られるいわれも無い」



だって私たちは付き合ってるわけでも、身体の関係があるわけでもない。
単なる上司と部下で、単なる添い寝トモダチだ。



(手もつないだことないし、デートだってしたことないし)



だからそんなふうに嫉妬されたところで、同僚の男子と話すことも、合コンに行くことだって止められる理由などなにもないのに。



(………こんなふうに変な罪悪感を感じることだって、無くていいはず)


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