夢の欠片 ~カタチあるもの~
青空の映えるみどり色の秋の風が爽やかだった。
「母さん、いってきます」
「いってきます、真弓お姉ちゃん」
「いってらっしゃい。二人とも早く帰ってきてね、今日の晩ご飯はがんばっちゃうよー!」
真弓お姉ちゃんは料理がとても上手い。
『月刊CooooK』というところで連載を持ってたり、料理本を出して暮らせるくらい上手で、私には毎日がご馳走だと思うんだけど、さらにその上があるのかな。
「うん! すぐ帰るよ」
「母さんのご馳走なんて久々だな」
「『お姉ちゃん』の、でしょー」
羚弥くんは頬を赤くした後で「はいはい、じゃ、いくから」と歩き出していった。
「なかなか難しいですなあ」
「そうですなあ、男の子ですなあ」
私たちはそそくさと歩き出していく羚弥くんの背中を見送っていた。