«過去アリ少女と訳アリ集団»
尚の一言にビシッと全身が硬直し、一瞬、思考が止まる。
もう出なきゃいけないのに…。
そう思うのに、体は一向に動こうとしない。
まるでここから出て行くなとでも言うように。
何でだろう。いつもじゃ大して気にしないような一言なのに。何とでもとれる言葉なのに。
一つの意味にしか、取れない。いや、それしかないのだとはっきり解る。
それはきっと、尚の声がいつもより低くて、尚の纏う雰囲気がいつものような明るく輝く光じゃなくて、その背景の影であったからじゃない。
この人は、誰なんだ─。
「俺さ、彼女出来たんだ。─侑麻使ったら瞬殺だったけどな」
「え、は…?ど、どういうことだよ…」
「だからあ、俺と付き合ったら四六時中侑麻の側にいられるよ、って。特別扱いされるよって言ったらすぐ落とせた。─ははっ!本当単純だよなあ。女も侑麻(あいつ)も」
「…いっ、いやっ、あの、さっ、流石にそれは酷いんじゃねえの?」
「はあ?寧ろその逆だろ。ただのギブアンドテイクだろ?あいつにとって居やすい場所を俺が作って、そんであいつを利用させてもらう。…なにもおかしいとこはねえだろ?」
…嗚呼、そうか。
「うん、そうだね。それであってるよ、尚」
「─…え、お前……何でここに…てか話聞いて」