禁じられた放課後



「美咲さんの所へは行ったんですか」



直哉は無言で頷いた。

そうですかと相づちを打つように再び窓の外へ視線を向ける山根に眉が下がる。

こんなに静かな部屋の窓から毎日何を見ているのか。



山根のことだ。

きっと自分の体よりも残してきた生徒たちのことで頭がいっぱいだろう。

しばらく続いた沈黙の後、直哉は意を決して口を開いた。



「悪かったな……お前の生徒を傷つけた」



こんな言葉では何も変わらないしどうしようもない。

しかし山根にとって何が一番大事なのかを、直哉は分かっているつもりだった。



いつも生徒を思っている山根。

そして涼香はそんな山根が担当するクラスの生徒だ。

その涼香を、自分の勝手な想いと行動のせいで危険な目に遭わせてしまった。

償いようもない出来事。



「先輩は…いや吉原先生は、一体何に対して謝ってるんですか。早瀬があの中学生たちにされたことを言っているのか、それとも……吉原先生が彼女に与えた心の傷のことを言ってるんですか」


「山根……」



シーツの上で震える拳を見ながら、直哉はゆっくりと頭を下げた。

どうすればこの道を歩まずに済んだのか。



しかし出逢った瞬間からすでに止めようがなかった。

涼香は直哉の中に大きく存在し、また涼香も直哉を求めてしまった。



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