禁じられた放課後
平日の居酒屋は、若いカップルや仕事帰りのサラリーマンに席を覆われている。
カウンターに座った美咲と鞘野は、小さなグラスに軽めのドリンクを注いでいた。
「ふふっ、ご心配なさらなくても、私は吉原先生とはなんでもありませんよ」
未だ堅い態度を見せる美咲に、鞘野は笑って言葉を掛けた。
たとえそんなふうに言われたところで、直哉への不信な気持ちがきれいに消え去ることはない。
事実あの廊下で美咲が見た場面は、鞘野の直哉に対する近親的な感情を覚えさせていたのだ。
「その証拠はあるんですか」
自信なさげな美咲の言葉に、鞘野はグラスをふらつかせながら思わず吹き出す。
「あなた可哀相な人ね。愛する夫を信じられなくなってる」
哀れむように美咲を見て、鞘野はさらに言葉を続けた。
「教師同士の仲なんて危ないものよ。いつだって周りには若くて可愛い女子生徒が溢れているんですもの。それはもちろん逆も同じ。あなたの周りにも素敵な男子生徒はいるはずよ。
そして自分の信じていた人がそれを心配ないと言ったとしても、自然に周りから寄り付くものには何もできないじゃない?」
鞘野はグラスを口にかざし、それから小さく溜息をついた。