禁じられた放課後


タバコを取り出す仕草に力が入る。

鞘野は自分を冷静に装おうと強めのドリンクを注文して、1本のタバコを口に加えた。



「あの人の周りを囲む生徒への嫉妬は、いつしかあの人本人への憎しみに変わる。困らせたくて、苦しめたくて。殺したいほどにまでその気持ちが膨らんでいくのよ」



目の前に置かれた新しいグラスを、鞘野は一気に口元へ流し込んだ。

次第に人格を変えていくその様子に、美咲は恐怖さえ抱き始める。



「鞘野先生……でしたよね。あなたは何を考えているんですか」



テーブルに伏せていた鞘野が、ゆっくりと美咲を振り返った。



「あなた私と似てるもの。きっと仲良くなれると思うわ」



嫌な胸騒ぎを感じながら、再びそう言ってテーブルに伏せた鞘野を見つめる美咲は、その心のどこかで、この鞘野と自分の影を重ねずにはいられなくなっていた。




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