禁じられた放課後


「あぁ、山根か。もう少しかかりそうなんだ。手伝っていくか」


「どうせ命令でしょうが。それに一応オレの方がここでの経験は長いんで『山根先生』でお願いします」



ふん、と鼻で笑い直哉は再び窓の外に目を向けた。

バスが、停まっていた。



「でも吉原先生はラッキーですよね、担任受け持ちナシ。オレなんて三年、受験生ですよ」



山根はブツブツと文句を言いながら直哉の前に腰を落とした。

小さな段ボール箱の中を男二人分の腕が交差する。

擦れ合う感触は決して心地いいものではない。



「実はオレ今回が初めてなんですよ、受験生って。気使うんですよねー。とくにオレのクラス文系だから女の子ばかりだし」


「山根。こっちはいいから、そっちの資材を片付けて欲しいんだけど」


「ちょっと先輩、オレの話聞いてるんですか?」



直哉は段ボールを持ち上げ、窓の外が見える高さへと立ち上がった。

バスは、もう無かった。




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