禁じられた放課後
街の奥にある小高い丘を登って行くと、目の前には夜空を背負った展望台が見えてくる。
涼香は時々立ち止まるようにしながら、その星空を体中に浴びるように眺めていた。
歩くほどに賑やかな繁華街の光は届かなくなり、周りは次第に闇に包まれていく。
やがて展望台に灯るほのかな明かりが見える……はずだったが、そこには誰の姿もなく、光も灯ってなどいなかった。
「早く来過ぎたこともないと思うんだけど」
涼香は手元の時計を確認した。
もう数分で10時になる。
体に感じられるほどの風はないのに、視界に広がる木々たちは低くざわめきを立てていた。
「……、櫻井さん?」
ふと後ろに感じた気配に、涼香は声を掛けた。
見れば人影は一つではない。
「なんだ、他のみんなも来てたんだ」
しかし、一瞬笑みとともにゆるんだ涼香の表情は、直ぐさま硬く変化することとなった。
返事のないその人影は、少しずつこちらに近付いてくる。
涼香は、歩き方でそれらが星を眺める会のメンバーではないことを悟った。
「……誰?……っ!!」