先生の手が触れる時


「あ…そういえば、晴夏、バンドは?」

泣き止んだ私は目の前にいる晴夏に問いかける

「あー、さっきリハ終わったからもうすぐ本番」
「え!」

時計を見ると、もうすぐ15:40になるところだった

「急がなきゃじゃん!ごめん!行こ!」

私は晴夏の手をとって引っ張る

「………泣いたり、焦ったり、忙しい奴だな」
「……え?」

思わず晴夏の顔を見ると
晴夏は笑っていた

こんな顔、するんだ

でもすぐにその笑顔は消える

「……なに?」
「…あ……ううん。晴夏、笑ってた方がいいよ」
「は?」
「そっちの方がカッコいい」

そう言うと晴夏は、そう、と呟き私の前を歩き出す

「凜と待ち合わせしてんだろ…また後でな」

そして、ひらひらと私に手をふる


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