先生の手が触れる時

その日の夜、俺は信の家に向かい
今日の吉宮との会話で推測が確かになったことを伝えた

「…………そうか」

全てを聞いた後、信はそれだけ呟いた
絵理子さんはうつ向いたまま目を閉じ、何かに耐えているように手を握りしめる

「……これから、どうするつもりだ?」
「…今、凪は深山っていう友達の家にいるはずだ。まずは…凪と話さないことには…」

俺がそう呟くと信は首をかしげタバコをふかす

「でも、変だな……父親とそういう状況なら…むしろ教師であり彼氏でもあるお前と離れる理由がわかんねぇ」
「……迷惑かけたくなかったから、とか?」

絵理子さんの言葉に信は何かしっくりこない、というように眉をよせた

「……ま、それも全部凪ちゃんって子から聞くしかねぇな」
「あぁ」

俺は頷いて、そっと天井をあおぐ
< 294 / 342 >

この作品をシェア

pagetop