愛されたガール
「今日は実家に帰ろうと思います」
……試すようなことはしたくありませんでした。
でも、いつも無口で無表情のタクミさんが焦るところを見たいという誘惑には勝てなかったのです。
そっとテーブルを挟んで向かい側の椅子に座っているタクミさんの様子を窺います。
タクミさんはやっぱり武将のように黙々と食材を胃の中に収めていきます。
彼女が実家に帰ろうとしているのにまさかの無視です。
(……愛されていないんだな)
じわりと涙が滲んでいきます。
通訳とか調子の良いことを思っていたけれど、タクミさんの本当の気持ちを分かっていなかったのは私の方です。
キスをされて舞い上がっていたのでしょうか。
気持ちが通じていたのだと勝手に思い込んで、押しかけるようにして始まった同居生活。
優しいタクミさんが私を追い出せなかったのも無理はありません。