クールなお医者様のギャップに溶けてます
「味噌ラーメン大盛り二つと餃子二つー‼」

威勢の良い声で注文が入った。

遅い時間でも混んでるこのお店は雑誌にも載る人気店。
カウンター席が空いてて良かった。
ただ、何だろう。クールビューティの先生にラーメン屋って似合わない。
その違和感の原因を探るために見ていたら睨まれた。

「ラーメン好きなのか?」

「え、あ、はい。ラーメンは好物です。特にここのラーメン、研修の時に食べて以来、たまに思い出して食べたいな、なんて思っていたんです。今日来れて良かったです。」

ここのラーメン屋さんにはいつも食べに来たいと思っていた。
でも、大学病院に近付く事が恐怖だったからずっと来れずにいたんだ。
今日は本当に来れて嬉しい。
先生と一緒に来たのは予定外だけど。

「ふーん。それより、俺に言う事はないのか?」

先生に言う事…?
あ!

「今日はありがとうございました。」

「それはさっき聞いた。」

「えーっと、勉強になりました?」

「違う。」

「ラーメン、自分の分は後で払います。」

「それも違う。ここはご馳走してやる。」

「?」

他に話す事あるかな?

「青木に会っただろ?」

え?もしかして気にしてくれてたの?

「ちゃんと話せたか?」

「はい。謝る事が出来ましたし、きちんと話せました。ご面倒お掛けしました。」

「気にする必要ないって言っただろ?でも、良かったな。」

ポンと頭に手を乗せてくる。
そのタッチ、ドキドキするからやめて欲しいんですけど。

ブンブンと頭を振り手をどかすと先生が笑った。

「初めて見ました。先生が笑うとこ。」

「俺だって普通に笑う。何だと思ってるんだ。」

「いや、いつもポーカーフェイスな感じなので、それが普通なのかと。」

「そんな普通があってたまるか。」

プイと拗ねたようにそっぽ向く先生も初めて見た。
へ〜、意外と普通なんだな。

「君こそ、本性隠してただろ?」

「本性?」

「俺を避けたり、オドオドしてた。本来の君は物怖じしない女性のはずなのに。」

何か言い方が癇に障るけど、先生や大学病院のスタッフと関わりたくなかったのは事実だ。


< 31 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop