クールなお医者様のギャップに溶けてます
一昨日の事が思い出されて耳まで熱くなる。
見られないよう顔を背けたけど、「おい」といつものように呼ばれた。

「そのマスク、風邪でも引いたのか？」

「いえ、これには色々と訳がありまして…。ただ、風邪ではありません。」

「それならいいが。」

「．．．」

き、気まずい。
こういう時って何話すんだろう。
ていうか私は仕事に戻らなきゃいけないんだ。

「私、戻りますね。」

「あぁ。近いうち、連絡する。」

「はい。」

「…」

「？帰らないんですか？」

「聞くのを忘れていたんだが、山田さんのお孫さんとはどうなった？」

あれ？
私、先生が好きだって伝えたよね？

「何もないですけど。」

「そうか。」

「でも、素敵な方でしたよ？」

「俺の前で他の男の事を褒めるとはなかなかだな。」

眉間に皺が寄った顔を見てすぐに謝る。

「す、すみません。でもお爺さんもお孫さんも本当に素敵な方たちなんです。」

「ふーん、まぁいいけどな。君は俺のものだから。じゃ、仕事頑張れよ。」

俺のもの、と言われてキュンとしない女子がいるだろうか。

大きく深呼吸して、浮き足立つ自分をなんとか現実へと戻し、仕事へ向かう。
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