ずっと俺の傍にいろよ Ⅰ
「あら、やっと目覚めたのね?気分はどうかしら?」


「頭が殴られたように痛いです…」


「その痛みもすぐに治まるわ」


そう言った彼女は、私の腕を捲り上げ、何事もないかのように注射を打った。

注射を打つ際にチクッと一瞬痛む。

やっぱりこの人は女医さんなんだ!と そう心の中で思った。


注射を打ったお陰か、次第に頭痛が治まってくる。
良かった!!


「あの、ありがとうございます!私を助けてくれて…
あなたは誰なんですか?」


「いいのよ、別に
私の名前は、森口亜季(モリグチ アキ)よ

そういうあなたは?」


森口亜季さんはそう言うと、不思議そうな顔をして私の顔を覗いてきた。


「私の名前は、田村涼子です
私、工場の前で倒れてたんですよね?
それって亜季さんの仕業ですか?」


「何よ、それ
私はあなたを助けたのよ?
変な言いがかりはよして!

涼子さん、レンタル彼氏貸し出します!のチラシを見て家に来てくれたのよね?

じゃあ、早速だけど…その愛する人の名前を教えてくれるかな?」


「私の愛した人は、須藤健吾さんです!
本当に健吾に会えるんですか?
私、健吾に殺されたりしませんよね?」


「それは大丈夫よ!
だって、あくまでレンタル彼氏なんですもん!
うふふっ、あははは」



森口亜季さんは、急に甲高い笑い声を出し、手に持っている機械をタッチしては、何やら操作している。


操作が終わったのか、私の方を向いてはニヤリと微笑んだ。



「もうじきここに彼が来るわ!
だから、もう少し待っててね」


そう私に向かって言った森口亜季さんは、そのまま私の元から歩き去って行った。


どうしよう。
まず健吾に会ったら、何話せばいいの?


私は緊張して、身体中から汗が吹き出る。


その瞬時に、この部屋の空気が異様なくらい一気に重くなった。
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