碧い人魚の海
 風がやんだ。中空に持ち上げられたがれきが次々と、ゆっくり地面に降り、少し転がってただの石くれに戻った。
「けど覚えておいてね、アルベルト。わたしはあなたのこと、大嫌いなの。それに、あなたがあの森を焼き払ったときのことは忘れない」

 男は無表情のまま少女の言葉を聞いていたが、ルビーには彼が微かに身じろぎをしたように見えた。
「緑樹の王、あなたが──」
 口を開きかけて、彼は言い直した。
「おまえがおれの手をとり妻として国に赴く気がないのならば、これからおまえは家臣としておれにつき従うということになる。名前を呼ぶな。元首と呼べ」

「アララーク連邦国国家元首閣下」
 淀みなく、冷たい声で少女は答えた。
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