誘惑して、キス
「じゃあ子ども扱いしてない証拠を見せてやる」
「え?」
「ちゃんとお前が大人だってこと、教えてやるよ」
しょうがねぇな、と言葉を洩らす先生。
……なんだか、嫌な予感がする。自慢じゃないけれど、こういうときの予感は大体当たるのだ。
そんな考えを肯定するように先生は口の端を上げてニヤリと笑うと、私の膝裏に手をまわした。
「きゃっ……」
「口で言ってもわからないみたいだからな、態度で示すしかないだろ?」
「えっ、せんせ、まさか」
何を今さら焦ってるんだ、とどこか楽しそうに呟く先生は私を軽々と横抱きにした。所謂お姫様だっこだ。
人生2度目のお姫様だっこ、なんて喜んでいる暇なんてない。
大股で進む先はすぐに想像が出来た。
リビングを出て10歩進んだ先、右手に見えるドアは寝室に続くドアだ。
「せんせっ、待ってください!」
「待たない、仕掛けたのはお前だ」
「せ、せめてシャワーを」
「どうせ汗かく、後でいい」
……ぜ、全然良くない!
どこか楽しそうな先生は、今にも鼻唄を歌い出してしまいそうなほど上機嫌だ。しかし、それも反比例するように私の心臓のリズムは速度を増す。
ドアの前に辿り着くと、先生はもう一度私の顔を覗く。
そして、ニヤリと笑った。
「ゆっくり時間をかけて教えてやるからな」
あぁ、神様、私どうなっちゃうのでしょうか。
先生の笑った顔は大好きだけど、今はそれが悪魔に見えちゃうんです。
諦めるしかない?観念するべき?
それとも、これもいわゆる、先生の言う"愛情表現"に含まれるのかな?
……だとしたら、まぁいいかなぁ、なんて。
だけど知らなかったのです。
まさか、朝方まで寝かせてもらえないほどの"愛情表現"をされるなんて。
そして、次の日に驚くほどの筋肉痛に襲われることになるなんて。
想像も出来なかった私は、やっぱりまだ子どもなのかもしれない。
Fin.
