天狗娘は幕末剣士
「おはよ。
……一くん、まだ目を覚まさない?」
「うん、まだ……」
「そうか……」
部屋に沈黙が流れる。
しばらくして、その沈黙を平助くんが断ち切ってくれた。
「そろそろ飯できるからさ、支度できたら来いよ」
「うん、ありがとう」
ニッと笑って、平助くんは私達の部屋を後にした。
私も、ゆっくりと布団から抜け出し、身支度を始めた。
新選組の中は、池田屋の事件を乗り越え、まだ少し浮かれた感じが残っていた。
だけど、私はまだもう1つ問題を抱えているから、浮かれていられない。
『3日後、吉田山に来い。
そこで決着をつける。
逃げるなよ、遠野杏子。
武士だと言うなら、必ず約束を果たせ』
白竜さんの言葉が頭に響く。
そう、今日はその約束の日。
私は、白竜さんと決着をつけなきゃいけない。
白竜さんを、倒さなくちゃいけないんだ……