天狗娘は幕末剣士


芹沢さんはピタッと足を止め、ゆっくりと私に向き直った。




「杏子、土方達はワシを殺す気なのじゃろう?」




「え……」




「そうなのじゃろう?」




「そんなこと……」




ないとは言い切れなかった。




土方さん達から、直接言われたわけじゃない。




だけど、心のどこかでなんとなく、そうなるのではないかと思っていた。




確信なんて無い、ただの勘だけど……




私は、芹沢さんの言葉を否定できなかった。




「……杏子、明日、ワシは必ず自室で眠る、よいか、必ずじゃ」




「え、はい……」




「土方とお梅には、絶対に部屋に入るなと伝えろ。

 ……明日を過ぎれば、ワシは新選組を抜ける」




「え……!」




「必ず伝えろ、良いな杏子」




「はい……」




そう言い残して、芹沢さんは先に歩き出した。




だけど、私はその場からしばらく動けなかった。




聞いてしまった以上、私は今の話を土方さんに報告しなければならない。




でも、それを口にしてしまうと、芹沢さんを殺すことが本当になってしまいそうな気がして……




どうしても、屯所へ足を動かすことが出来なかった。




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