天狗娘は幕末剣士
「私、芹沢さんがそんなに悪い人だと思えないんです。
横暴で困ったところもあるけれど……」
だけど、それが全てじゃなかった。
「夕方、一緒に町を歩いていたら、数人の子供達に会いました。
彼らは、芹沢さんを見つけると、笑顔で駆け寄って来ました。
芹沢さんも、そんな彼らを見て、笑っていました
……あの笑顔は、嘘じゃないと思うんです」
脳裏に、夕方見た子供達と芹沢さんの笑顔が浮かぶ。
嫌われ者の芹沢さんだって、誰かに愛されている。
そして、彼も、誰かを……お梅さんを愛している。
それは、私達も同じだと思う。
私達だって、誰かに愛され、大切な誰かを愛している。
彼と私達に、何の違いがあると言うんだろう。
彼だって、誰にでもある優しい心を持っている。
「芹沢さんが殺されれば、きっと子供達やお梅さんは悲しみます。
だから……」
だから私は、諦めたくなかった。
私だって、好きな人が死んだら悲しくなる。
彼らも、私と同じように、好きな人が死んだと知ったら、悲しむはず。
そんな思い、彼らにはしてほしくなかったから……