夜が明けたら、君と。
「どこいくの」
足取りがふらつく。
立ち上がってみれば、自分が思っているよりもずっと酔っているのがわかった。
「……部屋。ツインだから狭くはないよ」
「ツインって」
奥さんは?
問いかけようと思った言葉は、続く言葉にかき消される。
「一人の部屋に帰りたくないんだろう?」
帰りたくない。
彼の思い出に触れたくない。
堰を切ったように、想いが体内を駆け巡る。
「今晩のことは夢だったと思えばいい」
でもそれは過ちでしょう?
そんな反感は湧き上がったものの、抗うほどに正気ではなかった。
ホテルの部屋に入り、小綺麗な内装に目を奪われる。
ここは普通のホテルだ。
私が彼とよく行くようなけばけばしいそれ目的のホテルとは違う。
まあ、やることは一緒だけど。
「シャワー浴びる?」
「ええ」
言われるがまま、バスルームを借りた。
奥様はいいのとか、どうして一人でこんな部屋をとったのとか、
疑問は沢山あったけれど、一晩限りの関係にそんな質問は無粋だ。
一歩踏み出してしまったなら、もう本当に夢の出来事なんだと思った方がいい。