オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
京夜side
婚約披露パーティーが終盤に差し掛かり、ほんの少し安堵した頃。
とあるテーブルの出席者の中に違和感を覚える者がいた。
俺の父親と話す日本屈指の酒造メーカーの社長。
その彼の背後に隠れるようにいた女だ。
感謝祭のようなパーティーなら娘を連れてくる者も多い。
それは、俺の相手として娘を売るような父親だ。
だが、今回ばかりは違う。
俺と希和の婚約式だ。
俺の相手を披露する場で、娘を紹介する行為がどういう事か。
理解出来ぬ者などいないだろう。
それゆえ、大手酒造メーカーの令嬢がわざわざ出席する意味が分からない。
しかも、明らかに俺らに悪意に満ちた視線を向けていた。
いや、違うな。
俺らではなく、希和にだ。
よくよく考えれば理解も出来る。
御影の嫁の座を狙っていたのなら、希和の存在は邪魔だろう。
だから、あのような悪意に満ちた感情を露わにする事も……。
だからと言って、既にメディアでも発表している今、
今更足掻いても何の得にもならない筈だが。
そこまでして手に入れたいモノなのだろうか?
そりゃあ、地位や名誉も財産だって手に入れられる。
けれど、俺の心が無いのに幸せになれるとも思えない。
金さえあればいい、そういう輩だって事か。