オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
日付が変わろうとしている頃、漸く自宅へと帰ることが出来る。
いつものように後部座席のドアを開ける彼女の手に自分の手を重ねる。
「京夜様?」
「俺が運転するから、助手席に乗れ」
「ですが……」
「いいから、乗れ」
「…………はい」
守衛以外誰もいないのだから、気にする事は無い。
けれど、彼女はパパラッチでもいるかもしれないと、
しきりに辺りを見回して、警戒心を解こうとしない。
そんな彼女の手を握り締め、助手席へとエスコートする。
「自宅に帰るだけなんだから、もう電源をオフにしていいんだぞ」
「…………はい」
俺の言葉はいつだって棘がある。
声だって低いし、威嚇しているように聞こえるらしい。
だから、彼女に語りかける時は、出来るだけ優しく話しているつもりだ。
それでも、仕事中は俺自身が戦闘モードになっているせいか、
彼女の雰囲気も緊張感があるのも事実。
だからこそ、その仕事用の鎧を脱いで欲しい。
せめて、俺の前だけは。
俺の言葉に漸く笑顔を見せた希和。
はにかみながら、助手席に座った。
俺はすぐさま運転席に乗り込み、自宅へと発進させた。
自宅マンションまで車で5分の距離。
深夜という事もあり、3分で着いてしまった。
「ありがとうございました」
こんな他愛ない事でも、彼女にしたら嬉しい事なのか?
久しぶりに見せた満面の笑みに、俺の方が照れ臭くなる。
慌てて視線を外した隙に、彼女はサッと車を降りてしまった。
………しまった。
助手席のドアくらい開けるべきだったな。
後悔先に立たず。