オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


ネクタイの結び目を緩めながら、優しい笑みを浮かべる京夜様。

いつ見ても胸をキュンとさせる彼の笑顔が、少しづつ歪んでゆく。


「おいっ、どうした?………気疲れでもしたか?」


緊張感から解放された彼は、ポンと私の頭に手を乗せた。

良かった、ご無事で。

彼の優しい声音に、人前だと分かっていても涙腺が緩まずにはいられなかった。

そんな私を見た京夜様は、護衛の人達に“回れ右”をするように指で合図した。

すると、一斉に背を向ける護衛。

空港職員の視線を遮るように、円陣で壁を作ってくれた。

そんな彼らの動きすら、スローモーションのようで。


目の前にいるのは紛れもなく私の大好きな人。


普段はクールな表情なのに、私の前では蕩けるほど極上に甘いフェイスをする。

なんだって器用にこなす割に、恋愛に関してだけは、かなり奥手で。

生まれてこのかた、お金に不自由した事が無いのに

私がチマチマ節約してるのを見ても、決して馬鹿にしたりしない人。

意外な一面を見れたら、この上なく幸せで。

毎日お傍で見ていても、決して飽きない。


この世でたった一人、私だけを愛して下さる方。

好きすぎて、想いが溢れ出す。



ゆっくりと広げられた両手。

ふわっとシトラス系の高級フレグランスが香って来た。

優しい笑みを浮かべて、私を受け止めて下さる胸までたった一歩。

手を伸ばせば届くその距離、僅か50センチ。


いつもなら飛びついてしがみつくのに、

今は足が鉛のように重くて動かない。


「希和」


極上の王子様の美声も木霊してるみたいで……。


微動だにしない私に痺れを切らした彼は、

ゆっくりと私に近づき、長い腕で優しく包み込んだ。


ありがとうございます、京夜様。

……ご無事でいて下さって。

だけど……


「ごめんなさっ………」


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