オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ

京夜side




関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉をくぐり、独身最後の公式行事が幕を閉じた。

思わず零れ出す本音。

滅多に愚痴を零したりしない俺だが、さすがに今日ばかりは胸を撫で下ろした。


希和の方に振り返れば、大きな瞳に涙をいっぱい浮かべていた。

今にも大粒の涙が零れ出しそうで。

俺は護衛の者らを払おうとしたが、傍にいる空港職員の視線が邪魔だ。

そりゃあそうだよな。

俺らはどこにいても注目の的だろうから。

だから俺は、空港職員の視界を遮るように護衛の者らに壁を作るように指示を出した。


これで、誰も俺らの邪魔はさせない。

おいで、希和。

俺は彼女を抱きしめたくて、両手を広げた。

けれど、瞳がますます潤むばかりで、俺の元へ来ようともしない。

本当に稀だが、俺がこうして両手を広げれば、いつだって飛び込んでくる彼女なのに。

もしかして、緊張していた糸が切れて動けないとか?

それとも、俺が来るのを待っているのだろうか?


人前で涙など見せぬ彼女だが、さすがにホッとしたのかもしれない。

今までずっと頑張りすぎていたから。


俺は、無言で彼女を抱きしめた。

壊れ物を扱うみたいに、そっと。


なのに、彼女は抱きしめ返す事もせず、

俺の胸に埋めた顔をゆっくりと持ち上げ、女神のような美しい笑みを浮かべた。


「ごめんなさっ………」


大きな瞳から一粒の涙が零れ出した、次の瞬間!


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