オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
俺は父親から連絡を受け、空港に向かっていた。
数年前から取り組んでいるプロジェクトのキーマンでもある人物が、
極秘に来日するとの情報を入手した。
プロジェクトを成功させる為には、どうしてもその人物の協力が必要で。
何がなんでも『YES』の返答を貰わなければならない。
その人物は世界的にも有名な人物なのだが、
決して表舞台に姿を現さないことでも有名で。
だからこそ、その付加価値は何百倍、何千倍にも化けると言って過言ではないが、
かなりの変わり者だという噂も絶えない。
とりあえずは、接触することが最大の難関だろう。
ハンドルを握る手にも力が入る。
国際線ターミナルの到着口に到着した俺は、腕時計で時間を確認する。
アムステルダムからの到着予定が12時00分。
もうそろそろ到着する頃か?
水面下で入手した情報は、『Camille(カミーユ)』という名前だけ。
男性でも女性でもよくある名前だし、
ファーストネームなのかミドルネームなのかすら分からない。
容姿の情報に至っては、殆どあてにならない。
大柄な男だという噂もあれば、老女だという噂もある。
ただ言えることは、コンタクトが取れるような仲介の人物もいないだけに
ここ数年、情報を入手しては空振りばかりで、
未だに接点すら持てていないのが、現実。
『御影』という名など全く無意味で、
この俺が、希和以外に『無力』を噛みしめた人物だと言える。
今日こそはと気合を入れ、仁王立ちのように腕組みし、
今か今かと待ちわびたが………。
機体が到着して既に3時間が経過。
次々と飛行機は離発着しており、本当に焦りが押し寄せて来る。
これまでの情報を分析し、事前にそれらしい人物の容姿を記憶して来たが、
それらしい人物は現れなかった。
「如何しますか?そろそろお戻りになられますか?」
「………そうだな」
深々とお辞儀した部下たちと別れ、俺は急いで自宅へと急いだ。