オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ

希和side



ブライダル休暇、最終日。

退院して4日目を迎えた朝。

京夜様は慌ただしく自宅を後にした。

数日前にも同じように慌ただしく外出されたが、

数年前から進めている大型プロジェクトのキーマンともいえる人物が、

極秘で来日するとの情報を再びキャッチしたようで……。

御影の力をもってしてもコンタクトすら取ることが困難で、

本当に謎だらけの人物だと口にしていた。


帰宅は昼過ぎになるとの連絡が入り、

私は慌ただしくマンションを後にした。



*********


「先生」

「はい」

「それって、…………取らないとならないということですか?」


私は母親に付き添いをして貰い、退院したばかりの病院を訪れていた。

『鈍痛ではなく、鋭い痛みがあった時は、すぐに受診するように』

との医師の言葉が気になって、どうにも不安が打ち消せなかった。

幾ら痛みに耐えられるからとはいえ、

目に見えない部分の痛みが何から来るものなのか。

単なる疲労や神経痛のようなものならいいのだけれど、

あの時の医師の真剣な表情が気になって仕方なかった。

京夜様に急な仕事が入ったのも、きっと神様の采配だと思う。


担当医の説明に言葉を失くす母親。

口元を覆うハンカチに添えられた指先が震え出し、今にも嗚咽が漏れ出しそうだ。

私はというと、意外にも冷静で取り乱すことなく落ち着いている。

それは心のどこかで、何となく分かっていたような……。


「いえ、摘出の必要はありません。ご安心下さい」

「………そうですか」


担当医の言葉に安堵したのは確か。

けれど、突き付けられた現実は想像していた以上に過酷で。

スーッと頭のてっぺんから血の気が引いて行くの分かる。

MRIの検査結果を確認しながら、医師の説明が続く。


下腹部の鋭い痛みは、術後の癒着によるものだそうで。

術後は出来るだけ早くに体を動かす必要があるのだが、

私は意識が戻らず、何日も横たわった状態だった。

それにより癒着してしまい、部位が部位なだけに不安が募る。


「先生、正直にお願いします。私、……………子供を授かれますか?」


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