オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
希和side
ブライダル休暇、最終日。
退院して4日目を迎えた朝。
京夜様は慌ただしく自宅を後にした。
数日前にも同じように慌ただしく外出されたが、
数年前から進めている大型プロジェクトのキーマンともいえる人物が、
極秘で来日するとの情報を再びキャッチしたようで……。
御影の力をもってしてもコンタクトすら取ることが困難で、
本当に謎だらけの人物だと口にしていた。
帰宅は昼過ぎになるとの連絡が入り、
私は慌ただしくマンションを後にした。
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「先生」
「はい」
「それって、…………取らないとならないということですか?」
私は母親に付き添いをして貰い、退院したばかりの病院を訪れていた。
『鈍痛ではなく、鋭い痛みがあった時は、すぐに受診するように』
との医師の言葉が気になって、どうにも不安が打ち消せなかった。
幾ら痛みに耐えられるからとはいえ、
目に見えない部分の痛みが何から来るものなのか。
単なる疲労や神経痛のようなものならいいのだけれど、
あの時の医師の真剣な表情が気になって仕方なかった。
京夜様に急な仕事が入ったのも、きっと神様の采配だと思う。
担当医の説明に言葉を失くす母親。
口元を覆うハンカチに添えられた指先が震え出し、今にも嗚咽が漏れ出しそうだ。
私はというと、意外にも冷静で取り乱すことなく落ち着いている。
それは心のどこかで、何となく分かっていたような……。
「いえ、摘出の必要はありません。ご安心下さい」
「………そうですか」
担当医の言葉に安堵したのは確か。
けれど、突き付けられた現実は想像していた以上に過酷で。
スーッと頭のてっぺんから血の気が引いて行くの分かる。
MRIの検査結果を確認しながら、医師の説明が続く。
下腹部の鋭い痛みは、術後の癒着によるものだそうで。
術後は出来るだけ早くに体を動かす必要があるのだが、
私は意識が戻らず、何日も横たわった状態だった。
それにより癒着してしまい、部位が部位なだけに不安が募る。
「先生、正直にお願いします。私、……………子供を授かれますか?」