オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「俺は、……………待つことしか出来ないってことか」
母親に慰めて貰いたいわけじゃない。
この突き付けられた現実を呑み込むには、相当な時間がかかりそうだ。
自分自身に言い聞かせるように、無意識に心の声が漏れ出していた。
「希和さんが帰って来易いように、今は仕事に集中して……」
「………」
そんなことは言われなくても分かってる。
気休めの言葉を掛けて欲しい訳じゃない。
混乱する頭を整理したいだけ。
「言いたいことは分かった」
「本当?」
「同じことを二度も言わせんな」
「だったらいいんだけど……」
「もういいだろ、切るぞ」
「……ええ」
まだ言い足りないような母親の言葉を遮るように、俺は通話を切った。
握りしめるスマートフォンが憎らしい。
彼女から………、
直接言われたのなら納得のしようもあるが、
何が何だか分からないまま、
母親に命じられたかのように我慢しないとならないなんてな。
彼女の意思を、気持ちを尊重したいからこそ、我慢出来る。
ここに至るまでも、相当な葛藤があったに違いないから。
だからこそ、堪えるしか出来ない自分が愚かで。
何一つ、力になれない自分が歯痒くて。
俺という存在が、彼女の人生にプラスにならない限り………。
瞼を静かに閉じ、奥歯を噛みしめ、深く深呼吸する。
何度も何度も自分自身に言い聞かせる。
今にも暴れ狂う感情をコントロールして
今はただ、彼女の倖せだけを願った。
「よし、……やるぞ」
パッと見開いた瞳からは、男の決意が見て取れた。