オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


トレーニングから戻った私は、

授乳疲れのエイミーを起こさないように静かにリビングに行くと。


「あっ……」


リビングのソファーでララを抱きながら寝入っているディックを見つけた。

ディックはララの父親であり、エイミーのパートナーでもある。

手術を執刀する医師団の一人がディックだったのだ。

彼は形成外科の専門医で、若きエキスパートと称される人物らしい。

火傷痕や癌切除後の形成手術を得意とし、

難病によって壊死した部位の手術後のケアも専門だというのだ。

エイミーの連絡によって帰国した彼は、

術後の緩和ケアも大事だからとオランダに滞在している。

だけど、私は知っている。

彼は、エイミーと幼いララが愛おしいのだと。

エイミーがゆっくり寝れるようにとララをこうして寝かしつけたりしているのだから。


ディックはモデルかと思うくらいすらりとした背格好で、

顔の彫が深く、きれいな色の瞳をしている。

街中で見たら、きっとモデルや芸能人かと間違えてしまいそうだ。

一般的に言ったら、どストライクのイケメンだと思うけど、

私は目が肥えているよね、多分。

あの人をずっと見てきているせいか、ディックを見てもときめいたりしない。

そんな私だから、こうして長期滞在させて貰えてる理由の一つだろう。



エイミーの負担を減らすためというのもあるが、

実際は腕が落ちるのが怖いというのが本音。

彼の元に戻ることが出来たなら、

また彼に『旨いな』と言わせたい……。

だから、エイミー宅での私の仕事は食事担当。

エイミーとエイミーの母親からオランダ料理も教わり、だいぶレパートリーも増えた。

本場のチーズを使った料理を習い、料理の腕も上がったように思う。

エイミーは親日家だが、エイミーの影響なのかな。

ディックも和食が好きらしい。

天ぷらを作ったら、偉く感動された。


そんなやり取りの日常が嬉しくて、生きる楽しさを噛みしめていた。


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