オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
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「Ik zal beginnen(始めますね)」
「アゥストゥビリーフトゥ(お願いします)」
すっかり顔馴染みになった医師に片言のオランダ語で返すと、
にこやかな笑顔で相槌を打ってくれた。
術後8ケ月が経過し、傷痕除去の最終治療日を迎えた。
最先端のレーザー治療による除去施術は半年にも及ぶスケジュールで、
最初聞いた時は途方もなく長い歳月に思えたが、
振り返ってみると、半年だなんて本当にあっという間で。
その間に色々な事に挑戦していた。
本当に充実した日々を過ごせていたと思う。
たった1つを除いては………。
日本から遠く離れた場所にいても耳に入る。
世界的にも有名な『御影の御曹司の新恋人』なる情報が。
正直、気にならない訳じゃない。
セレブ令嬢が放っておくわけないし、
有名なハリウッド女優が口説いているという噂も耳にする。
今のご時世ネット環境さえ整えば、どこにいたって情報は入手出来るのだから。
彼が仕事でオーストラリアに渡航すれば、
恋人との婚前旅行だとゴシップ誌に大きく取り上げられる始末で。
気にしないように生活していてもやはり気になってしまうし……。
彼が心変わりしないことを祈るばかり。
唯一の救いは、こうしてお義母様の協力を得られているということが何よりの証拠で、
彼に新しいパートナーが出来たのであれば、援助を打ち切ってもおかしくない。
………そう思いたい。
御影の財力があれば、援助だなんて気に留めるほどのことでもないかもしれない。
それに、負傷したことへの罪意識から手を差し伸べてくれているのかもしれないし。
心の中で天使と悪魔が葛藤する日々を送っている。
盲腸や子宮筋腫で手術した人なんてごまんといるだろうし、
癌切除や帝王切開の手術痕がある人だって沢山いるだろう。
だから、気にせず彼の元に戻ることも可能なのだけれど。
自信がない。
私の心がGOサインを出すのを躊躇っていた。