俺様魔王の甘い口づけ


「どうしたの?そんな慌てて」

「いや…それがさ…」



今朝の出来事をお母さんのセリフもそのままに説明すると、唯花は大笑い。
いったい何がそんなにおかしいのか。
こっちはかなりの死活問題だっていうのに。
いや、それは大げさだけど。




「ごめんごめん。お母さん、いいキャラしてるわね」



私がじっとりとした視線を送っていたのに気付いた唯香は慌てて謝る。
いいキャラというか、ただ放任過ぎるだけ。

だって、高校に入ったら自立のために自分で朝ご飯くらい作りなさいって言い出した。
それは自立のためじゃなくて、ただ自分が楽したいからってのは見え見え。

だからこそ、私が起きてこなかったことに気づかないんだから。




「大変だねぇ、めーこ」

「…他人事なんだから」

「だって、他人事だもの」



クスクスと笑う唯香が恨めしい。




こんな当たり前な日常。
だから、この後自分の身に降りかかる摩訶不思議な体験なんて。





想いもしなかったんだ……。





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