俺様魔王の甘い口づけ
「芽衣子さま」
いつもの木の前で佇んでいると、ハンスが私を呼ぶ。
私は、顔だけをそちらへ向けるとフッと微笑んだ。
「・・・あまり外におられますとお体に障りますよ」
「大丈夫よ」
「ですが、病み上がりなのですから・・・」
ハンスはあれから3日も立ったというのに、この心配様。
過保護なんだからと笑いたくなる。
「ねえハンス」
「はい、なんでしょう。芽衣子さま」
「ルイの血を飲んだら、何かが変わるのかな?」
「なにか、とは?」
自分でも、なにが聞きたいのかわからない。
でも、たった一人で答えを出せないから。
誰かに聞いてもらいたかっただけなのかも。
「命が長らえられる。それ以上でも以下でもありません。芽衣子さまは芽衣子さまのままで、なにも変わりませんよ」
「ハンス・・・」
「その答えで、よかったでしょうか?」
ハンスはにっこりと笑う。
きっと、私がほしかった答えはそれだ。