俺様魔王の甘い口づけ


「俺様のすることすべてに文句があるのだろう。軽蔑、しておるのだろう。俺様がこのケガでどうなろうが、お前には関係ないはずだ」

「…」

「むしろ、死んでしまった方が、お前は嬉しいのだろう」

「…バカにしないで!」



私は、傷跡を押さえる腕をグッと強くして叫ぶ。
ルイは眉を寄せ、私を見た。
私はこみ上げるモノを抑えきれずに、ポロポロと溢れてくる涙。
なんで泣いてるんだろう。



「確かに、あんたなんて大っ嫌いだし、最低だって思うけど。だからって死んでいいなんて思うわけないでしょ!」




ああ、そうか。
悔しいんだ。
私が、そんな風に思っていると思われたことに。




「あの勇者を殺してほしくないって思うのと同じくらい、あんたにだって死んでほしくなんてない。生きてほしいに決まってるでしょ!」

「俺様に生きてほしい…?」

「当たり前でしょ!死んでいい人なんていないんだから!」




例え、どんなに非道で残忍な人だったとしても。
その人を必要としている人はいるはず。
私の言葉を受けても、あまり納得のいった様子のないルイ。




「俺様に、生きていてほしいと思う人間は一人もいない」





淡々とした口調でそう言い放つのだ。




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